眼科ブログ

アトピー性皮膚炎などが原因で起こる若年者白内障の手術例について

最近、当院で増えている手術の一つに、アトピー性皮膚炎による白内障手術があります。

アトピ-体質による白内障は若年者が多く、白内障手術時にチン小帯脆弱を伴っていたり、白内障の進行が速く成熟白内障や前嚢下白内障で前嚢癒着も伴っていたり、もともとの網膜剥離のリスクが高かったりするなど眼科的にリスクが高いという特徴があります。そのため、アトピー性皮膚炎による白内障は難症例白内障手術となるケースも少なくありません。リスクが高いことと、働き盛りの年齢のため仕事上での制限や要望もあり、内眼手術を専門とする眼科医師にとって調整や対策を必要とすることも多いのが実情です。一方、何とか患者様の希望される見え方に近づくことができるようにと苦慮し手術を行った結果、見え方が良くなっていただいた時はとてもやりがいを感じる疾患でもあります。
先日行った症例は「前嚢下白内障」といって、水晶体嚢の前側にある前嚢という膜に接している箇所から濁っていくタイプの白内障で、アトピー性皮膚炎をお持ちの患者様に多い白内障の一つです。前嚢下にヒトデ状に線維性混濁を伴うこともあるため、CCC水晶体前嚢切開の時に障害となることも多くあります。
術前の視力は LV = 0.05(0.3p×S-4.50D)
40代の患者様で三焦点眼内レンズファインビジョンをご希望とのことでした。
術後の視力は
 LV = 1.2×IOL(n.c)
 nLV = (1.0×IOL) 近見40cm
 nLV = (1.0×IOL) 近見60cmと改善することができました。

もう一つは成熟白内障が進んで水晶体皮質が液化した状態、いわゆるミルキー白内障と呼ばれるもので、これもアトピー性皮膚炎をお持ちの患者様に多い白内障の一つです。加齢に伴う白内障に比べ、白内障が進むスピードが速いのもアトピー性皮膚炎に伴う白内障の特徴なので、早期発見・早期治療がとても大事になります。
術前の視力は LV = 50cm/m.m.(手動弁)(n.c.矯正不能)
かなりミルキー白内障が進んだ状態で、乱視もあり三焦点眼内レンズファインビジョントーリックをご希望されました。
 術後の視力は
LV = 0.9×IOL(1.0×IOL×S-0.50D)
 nLV = 0.8×IOL 近見40cm
nLV = 1.0×IOL 近見60cmと大きく改善することができました。
手術前はいろいろとご不安なこともあったと思いますが、このように難症例でも見え方が劇的に改善し、喜んでいただくことができると、白内障手術を専門に手掛けている眼科医師として本当に嬉しく思います。
これからもよりよい眼科医療が出来るよう、スタッフ一同より一層研鑽を積んで患者様の目を守り、健やかな生活と豊かなアイライフに貢献してまいります。ご参考になれば幸いです。

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