眼科ブログ
10月は白内障手術47件を始め、合計78件の手術を行いました(硝子体注射を含む)。
主な内訳は次の通りです。
白内障手術
単焦点眼内レンズ 28件
五焦点眼内レンズ インテンシティ 9件
三焦点眼内レンズ ファインビジョン 3件
三焦点眼内レンズ パンオプテックス 5件
二焦点眼内レンズ シンフォニー 2件
眼内コンタクトレンズICL手術 12件
網膜硝子体手術 11件(黄斑上膜、網膜円孔、硝子体出血、増殖性糖尿病性網膜症、硝子体混濁など)
緑内障濾過手術 1件
翼状片手術 1件
硝子体注射 6件(加齢黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症)
先月の特徴的な手術例としてアトピーによる若年性白内障の症例を紹介させていただきます。
54才女性の方で、アトピーによる若年性白内障を患い、かなり進行している成熟白内障でした。水晶体皮質は融解しており、中の水晶体核は5段階評価でgrade4.5程度、核の硬化も高度に進んでおり、眼底は透見不能の状態でした。
アトピー性白内障でかなり進行した症例の場合、白内障難症例になることもあります。
手術前の視力は数値として出ずに 手動弁RV = 50cm/m.m.(n.c.)の状態でした。
ランドルト環の向きを大きくしても向きが分からず数値として出ない場合は
〇目の前の指の数を答えさせ、それを正答できる一番遠い距離を目測する指数弁
〇指数弁が得られないときは被検者の眼前で手を上下左右し、動きの有無を弁別できるかどうかを調べる手動弁
〇手動弁も得られない場合は暗室にて瞳孔領に光を当て光の明滅がわかれば光覚あり、わからなければ光覚なし、
という検査方法を選択します。
手動弁で成熟白内障のかなりの難症例白内障手術でしたので、まずは白内障手術を頑張ってその後眼底含めた網膜を見ていくことをお勧めしたのですが、まだ50代でパソコンをよく使うとのことで多焦点眼内レンズを強く希望されました。成熟白内障で中身の核は非常に硬く、周りの皮質はとろとろの液状に白く溶けている状態でした。液状の水晶体融解により水晶体嚢内の圧が高くなっていて、白内障手術が難しい症例です。
このような場合、通常通りに水晶体の前嚢を切開しようとすると、穿刺した瞬間に水晶体嚢が避けてしまい、最悪は水晶体核の硝子体落下などを引き起こします。アルゼンチンの国旗の様に嚢が避けてしまうことから、アルゼンチンフラッグと呼ばれています。
このような難しい状態に対応するために、手間をかけ二重にダブルCCC(前嚢切開を二重に行う)をして内圧の上昇にも気をつけ、ヒーロンVという通常より高分子量の粘弾性物質を使うなど対策を二重三重にして、なんとか白内障手術は無事成功しました。また、チン小帯にはそれほど問題無かったため、患者様とお話をして本人のご希望通りの5焦点眼内レンズ「インテンシティ」を挿入することにしました。
ほとんど何も見えなかった手動弁の状態から見え方が大幅に改善できたことでとても喜んでいただき、スタッフ一同とても嬉しい出来事でした。このようにアトピーを含む若年性の白内障手術は、かなり進行した症例の場合、難症例白内障手術となることもあります。当院ではできるだけ患者様の希望される見え方に近づくことができるよう、白内障に対する難症例を含めさまざまなシチュエーションを想定し、それに対応するためスタッフ一同日々研鑽を積んでおります。
今年も残すところ、あと2ヶ月となりました。朝晩寒くなってくる時期ですので、くれぐれもご自愛ください。ご参考になれば幸いです。
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